82. 「ぐわっ!」 「うおっ!!」 施設を守る傭兵らが、俺の剣や魔術に倒れていく。 何だかデジャヴな状態だが――。気にせず奥に居た麻薬商人だか何だかをブッ飛ばす。 『西南の方で、戦争が在っててね――。 この国を植民地にするツモリで、軍の奴らにこっそりソイツを広めたらしい』 リリィの話に在った、丁度その麻薬の持ち込まれた最中の時代、って奴に来たらしかった。 ――何の因果か。 どうでもイイ事だと思ったんだが、土地を移動する為には船に乗らなきゃ駄目でその船は全部軍部が押さえてて。 民間の船は、例の西南から来た連中の持ってる航空船、――というだけの話になった――ソレを奪う為に、此処に居る。 (だって金ねぇし。 持ってても払いたくない相手って言うのは居るよな) 会ってみてやっぱり払いたくないなと思ったから――、其処に在った苗みたいなのを燃やしてドサクサに船を頂いてやった。俺盗賊の才能在る?? 音機関は、譜業好きのガイラルディア爺さんからある程度教えてもらってる。 だからある程度は扱える。 ――だけど専門の操縦士とかそういう水準には及ばない。 あくまで素人に毛が生えた、ってぇぐらいのものだ。 だから……、 …………だから…………、えっと…………、 その、認めたくねぇが…………。 ……………………落ちた。 荒野のど真ん中だよド畜生!!! 「くそっ、ついてねぇぜ……」 毒吐きながら俺は寄ってきた魔物と応戦した。 ――どうやら、奴らの巣に入っちまったらしい……船の中でいちおう休みを取れたは取れたが、動かせないので在る品かっぱらって移動する。 途中で、鳥型魔物を焼いたらなかなかイイ具合に焦げてくれたので齧ってみた。うん結構イケる。 しかし『魔術』が良く扱える、って事は……。 此処はプラネットストームが無い、って事なのか? (プラネットストームの在る世界では第七音素と中和素が譜力を相殺し合うので中和素を使う事は出来ない) ――でも、魔物はプラネットストームの中でも『魔術』を使えるんだよな……。奴らの、言葉とはとても思えない言葉によって行われる譜術は。 (……譜術は音素を扱うもの。 魔術は元素を操るもの。 元素は音素で繋がり、より大きな物質と成る。 音素は音の信号であり物理的な意味での質量は無い。正確な意味で術者が拾っているのは目に見えない元素質) (『元素』は物理的な力が無いと動かせない。音素は六属性が揃うと元素一つ分としての『力』を発揮する。 だから第七音素は亜元素。中和素も亜元素。中和素は六つの属性の音素が個体から過剰になって外に出たモノ。 第七音素は、六属性の音素が過密状態の内部で結合したもの) (……第七音譜術士の体は第七音素を取り込めるようになってる。……つまりは亜元素、元素を取り込める) (俺の魔術も基本は音素を取り込んで、その際に出来る『空間』の元素を操るもの。 『音素』を操る点はおんなじ。 ――でも――、俺は取り込んだ音素を『媒介』にして外部の音素を操る事が出来ない。 ――だから、『譜術』は使えない……) 桁外れの音素吸引能力を頼りに、その際に変動した周囲の音素を音声譜で操ってるだけ。 (……………………俺は普通の人間より、魔物に体質が近いって事か??) 魔物は特定の属性に特化している場合が多い分、その逆性素が欠乏していてソレを補うと同時に自属性の音素も集め、譜術すなわち魔術が使える。空間の(大量の)音素同士が中和した状態がマナなので、音素を補う事は即ちマナを補う事であり、かつ中和状態の解除により、音素を取り出す事でもある。 プラネットストームの在る無しは関係無さそうだな……まぁ(プラネットストームによって増える)音素粒子の多い状態だと、より大きい音子を取り込む前に許容量が満タンに成るから使用できない、ってぇのは当たりだろうが。 「風よ――。土よ――。 その隙間なき力の狭間にて押し潰せ! グラビティ!!」 ズン――、大地が揺れる。 |