とっぷ壊殻の海ノ物語遊戯王Browsing 外伝


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13.

 「やったわね、遊矢!」
 ピットからメイが駆けてきたので、俺は有難う、と言って笑い返した。

 「それじゃあ、デュエルディスクはもう外して。Dホイールはこのままでイイから」
 嗚呼、とディスクを外してDホイールを降りてから、デュエル中に見付けておいた柚子たちの居た辺りを見る。

 実際に居たのは其処から少し動いた通路の部分で、最初に気付いたアユが手を振ったのを切っ掛けに、タツヤとフトシ、それから柚子も此方に手を振ってくれた。
 俺が手を振り返した後、柚子がポケットからデュエルディスクを出して見せる。
 スグに察して、俺は自分のデュエルディスクのメニュー画面から、通話機能のアイコンボタンを選択する。

 『おめでと! 遊矢』
 「――嗚呼」
 『これからは? 着替え??』
 「そうだな、借り物だから返さないと」
 『その後は??』

 「えぇと……、メイ、服を返したらその後は??」

 「特に無いわね。
  でも大勢で来てるんなら、是非この体験コーナーはやっていって欲しいわ」

 「そうか。
  遊勝塾のみんなにも、是非このDホイール体験やっていって欲しいって」

 『悪くないけど、出来るのはまだ先になりそう。
  ロビー辺りで待ち合わせって事で、イイ?』
 「――嗚呼」

 それじゃ、着替えたら来て。嗚呼。
 通話を切って、行こうか、と俺はメイに促す。
 「――うん」


 ピットからまた扉を通り、廊下の方へ。
 「今日は有難う、メイ」
 「コッチこそ。お陰で凄く盛り上がったし」

 俺的には、もうちょっとエンタメしたかったけれど……。
 まぁあの場合は、ノンビリやってちゃブーイング来た可能性も在ったし。
 (城之内プロがロード・オブ・ザ・レッドの効果を飛ばす程、最後は切羽詰まってたし)

 勝てたし観客みんなを楽しませる事が出来たから、まぁ合格。
 勿論アクションカードが無かったら、勝てる処か速攻で負けてた訳だけど……、ソレを引っ繰り返せるから、アクションデュエルは面白い。


 「御苦労だったな、榊遊矢!」
 
 レンタルルームから少し歩くと、赤馬零児と零羅と日美香と、何故か沢渡シンゴが進行方向から歩いてきた。

 「…お疲れ様」
 「嗚呼」

 「出来れば、もっと最新ルールの内容をアピールしてくれるプレイの方が望ましかったが。
  アクションデュエルとこのサーキットのプロバガンダとしては、合格点だ」
 「嗚呼、俺様の顔に泥を塗らなかった事は褒めてやる」

 …いちおう訂正。
 メイ(のお父さん)達を舞網市に誘致して、このライディング・コースを建設させたのは沢渡なのだ。

 その意味じゃあ今日のデュエルは俺じゃなくコイツが出てたかも知れないんだけど、事前に在ったLDS主催のクラス昇格試験で俺と知り合いになったメイが、俺を指名してくれたらしい。
 だったら俺と沢渡なのか、とも思えるけどプロ同士(にする)、と赤馬日美香が言っていた。

 「沢渡先生の御子息が、こう仰っていますので……。貴方の事ももう不問ですわ。
  いちおうピンチまみれで愉しませて頂きましたし」
 「……はぁ」

 その日美香が俺を見て目を細めたが、抜け作っぷりを披露して欲しいとか何とか言っていたので複雑な気分だ。

 「此方、デュエル協会からの報酬です。現金では何かとトラブルの元ですから、此方のレンタルアイテム無料引換券に換えておきましたわ」
 「――ですって。また来てね、遊矢」

 封筒を受け取った俺にメイが言う。

 「嗚呼」


 待ち合わせのロビーに行くと、売店が開いてて それなりに通行人も居たのだが、柚子たちは来てはいなかった。

 「思ったより早かったかな……」
 観客席へ向かう通路の傍、右と左のどっちから来るだろうかと思って歩き回る。

 ……なかなかやって来ないので、一度チケット売り場の方に戻り、其処に在った時計を確認。
 それからまた通路の方に行った後、暫くしてからまた時計を見に行くと、十分ぐらい経っていた。

 「うーん。遅いなー……」
 Dホイールの無料体験が出来るようになったのかも知れないが、柚子と権現坂ぐらいは、コッチに来てくれると思うんだけど……。

 …………。

 「――ねぇ。さっきの電話、此処で待ち合わせしてたって事??」
 見兼ねたメイが尋ねてくる。

 「――嗚呼。ロビー辺りでって……」

 「ホントに此処のロビーなの??」
 「――嗚呼。建物からは出てないと思うし……」
 「此処、六つぐらい入り口在るけど」

 不安で落ち込み掛けた処で、一瞬 思考が停止する。

 「六つッ!?」
 「――うん。一階に二つ、二階に四つ。階段昇るけど」

 
 取り急ぎ、ディスクの通話で確認する。

 案の定、駐車場から二階に上がってスグの処のロビーに居る、と答えてきた。

 「此処、入り口いっぱい在るんだって! 俺が居るのは、えーと……」
 「一階の北口」
 「そうっ、一階の北口!!」


 他のみんなとも近い方、という訳で俺達が二階に行く。

 ようやく二人に合流し、ゴメンとか何とか交わした後、観客席で塾長たちを探す。

 まだ会場フィールドには入ってなく、通路で順番待ちをしていたのを発見した。

 「おー、遊矢!」
 「やぁ」

 「あっ、メイちゃん!」
 「こんにちは」


 「まだ結構待ちそう?」
 「いや、次には入れると思うから」

 塾長がいったん顔を動かし、俺もフィールドに入る扉の部分、スタッフや其処で待っている人達の様子を確認する。

 「そっかー。
  けど正直、俺さっき乗ったからなーぁ」

 「だったら、カードショップの方 行かないか?」

 聞き覚えの在る声に「ん?」と其方を見上げると、赤い上着を着た男の人が、「よっ!」と片手を上げてウィンクしてきた。

 「遊城プロ!」
 「しーー〜〜〜っ! …十代でイイって」
 「はい、十代さん」

 「此処の建物を出た近くに、新しいカードショップが在るんだ。
  まぁ他の店も新しいらしいけど」

 「もしかして、ショッピングモールの方ですか?」
 「多分」
 「――そうね。此処から一番近いお店よ」

 そうなんだ、と俺はメイを見る。

 「他のデュエル用品は、コッチでレンタルしてるから。カードとあとグッズぐらいしか無いけど」
 「ふーん」

 「けど、対戦スペースぐらいは在るんだろ??」
 「ええ」

 じゃあ行こう、と十代さん。

 「えーーっ!!? 遊矢、僕に奢ってくれる約束はー!?」

 素良の不満そうな声がしたので、見ると本人が立っていた。

 「ゴメン素良。…居たのか」
 「居たよっ! 酷いなー、遊矢」

 「御免、ちょっと気付かなかった」

 死角にでも、なってたんだろうか……取り敢えず、モールには食べ物の店も在る筈だよな。




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